市教委は学校教育環境の在り方についての新たな基本方針策定に向け、学校教育環境検討委員会で検討を進めていましたが、9月の検討委員会で「福山市がめざす学びを実現する学校教育環境の在り方について」の答申案が示されました。
答申案では、今後の学校再編の在り方について、これまでの学校再編を「成果」と評価した上で、学校教育には一定の集団規模が必要であるとし、複式学級や1学級19人以下となった中学校の存在は認めず、適正規模の義務教育学校の整備を中学校区単位で強力に進める方針を定めています。
市教委は現行の中学校区ごとに義務教育学校を整備した場合の学校規模についてシミュレーションを行い、適正規模の校区を示していますが、同一の校区で再編を繰り返さないよう、適正規模に満たない校区では他校区と広域再編の検討を行い、適正規模を超過する場合は校区を分割した上で整備を検討するとしており、学校再編のみならず校区も再編する方針で、あらゆる校区が対象となり得ます。

福山市がめざす学びを実現する学校教育環境の在り方について(答申)概要版.pdfをダウンロード
1600名の陳情 学校は地域の「核」
学校再編の検討は市民に動揺を生じさせており、7月に熊野町の将来を考える会から「熊野小学校の存続を求める陳情書」が議長・教育長あてに1600名以上の署名とともに提出されました。陳情では、学校再編の検討で熊野小学校が統廃合の対象校となれば、地域住民の活力やつながりが消失しかねないとの懸念の思いが述べられています。

定例会の一般質問でみよし市議は、学校再編が地域の在り方にまで及ぶ方針であることを指摘し、陳情に対する教育長の認識を質しました。
教育長は、「陳情は、少人数教育や地域とのつながりが失われるため学校を残してほしいという思いであると受け止めてい」るとしつつ、「学校再編は避けては通れ」ないと、あくまで再編を続ける考えです。
一施設の整備に多額の税を集中
市は9月定例会での補正予算において、旧市民体育館の跡地に計画している(仮称)子ども未来館の整備にかかる、整備費約80億円、10年間の運営費25億円の計105億円の財源を確保する債務負担行為、資材高騰に備えた14億円の基金積み立てを盛り込みました。
財源については国の補助金や交付税で賄われる市債も見込まれますが、少なくとも52億円程度は市の財源で賄うことになります。

整備内容には、(仮称)子ども未来館と道路を挟んで立地しているエフピコアリーナとの一体的な利用を目的として、敷地同士をつなぐ整備費9億円ものブリッジも含まれます。

みよし剛史市議は24日に行われた予算特別委員会において、夏場のこどもの居場所整備など、子育て環境改善を求める声が高まっており、一施設の整備に多額の税を投じるのではなく、まずは市民の身近な暮らしを改善する税の使い方に改めるべきだと指摘しました。
「クラゲ館」の移設費用は5億円⁉
また、市は大阪・関西万博で展示された「いのちの遊び場クラゲ館」の膜屋根などを移設させる万博協会の事業に応募しており、移設先は(仮称)子ども未来館に隣接する五本松公園内とし、決定すれば約5億円の費用が見込まれると説明しています。

万博のパビリオン移設は、子ども未来館の検討委員会で決められましたが、「クラゲ館」をプロデュースした人物は検討委員会のメンバーであり、検討経過や判断が適切であったのか不透明です。

