2025年度の福山市一般会計予算に対する反対討論
議第2号 令和7年度福山市一般会計予算について、討論を行います。
国が示す当初予算は、過去最高の税収の見込みですが、当初予算で過去最大8.7兆円の軍事費を計上し、24年度補正予算と合わせて1.9兆円が半導体企業への個別の投資に充てられています。
軍拡や大企業へのばらまきなどの放漫財政により、社会保障、教育、中小企業対策、食料安定供給など、暮らしの予算はいずれも比重が低下しています。
その結果、低年金は改善せず、高額療養費の自己負担上限額の引き上げまで進めようとし、最も冷遇されている介護分野は崩壊の危機にあります。そして経済の低迷を打ち破るために最も求められている大幅な賃上げに向けた具体は全くの無策です。
本市には、市民生活を守る地方自治体の役割の発揮がますます求められます。しかし、物価高騰で市民生活が非常に厳しい状況にあり、暮らし・地域経済を支える施策がただちに求められているなかで、約200億円の財政調整基金は12億円を使うにとどまり、投資的経費は前年から約19億円減少しているとは言え、188億5000万円を計上しており、今後の大型公共事業の計画策定が多数盛り込まれています。地方自治法の本旨に基づき、福祉増進最優先の予算編成を行うべきです。
歳入では、地方交付税が約17億5000万円、個人市民税が定額減税分との差し引きで約11億円程度伸びていますが、人件費の支出が約26億円増加しています。今後の財政運営においては、自主財源確保のためにも地域経済の発展が欠かせず、その原資ともなる公務労働部分の処遇改善と、コスト安定化に向けた自給率向上に積極的に踏み出すべきです。
総務費では、基幹業務システムの標準化の整備に2か年で約35億円も費やしますが、運用経費は、標準化前との比較で2.3倍の12億円程度が必要となる見込みであり、運用経費を「少なくとも3割削減を目指す」とされた標準化の目的はすでに失われています。国に対してガバメントクラウドの利用を見直すことを求め、システムの運営主権を取り戻すべきです。
民生費では、乳児等通園支援事業は、想定される事業収入では十分な保育体制を整えることが可能とは言えず、継続利用が保障できなければ、乳幼児にとってストレスの大きい生活にならざるを得ません。補助単価を見直し、発達が保障できる事業内容に改めるべきです。
放課後児童クラブは公設公営を堅持すべきであり、人材確保が進まない根本の原因である支援員の処遇改善にこそ取り組むべきです。また、子どもの権利の拠点として児童館を設置すべきです。
高齢者の補聴器助成については、制度の開始によって市民の補聴器装用への関心が高まっていますが、高額のため多くが片耳購入にとどまっています。聴覚機能保持、社会参加促進、認知症予防等の観点から、さらに補助を増額して活用を広げるべきです。
また、部落解放同盟福山市協議会への団体補助金は廃止するべきです。
衛生費では、安定型最終処分場に対する勧告以上の行政指導が続いており、CODが基準値の6倍以上検出される事例も起きています。周辺河川への影響も懸念されることから、下流地域の住民と放流水の環境保全協定を締結し、事業者との協議の場を設けるとともに、定期検査結果を公表すべきです。
労働費では、奨学金返済支援事業の予算額が昨年度実績に応じて減額されていますが、企業の若もの支援策を補助する重要な事業であり、既存の返済制度も対象とするなど、活用しやすい要件へ改善すべきです。
農林水産業費では、年々米の生産量が減少しており、本市においては小規模の米農家を支援することが何よりも求められています。農地の集約化施策では相当の期間を要するため、生産コストの低減ともに、市内産米の公共利用を強め、積極的な販路拡大策を講じるべきです。
土木費では、急傾斜地崩壊対策事業の着手までに相当の期間を要している状況であり、着手分の早期竣工が求められますが、県補助金次第でさらに遅れる可能性もあります。施行要件を細分化し、市独自事業を設け、危険な崖地対策の早期着手を図るべきです。
福山駅前の再生においては、協議体の運営支援業務を長期にわたって同一の企業が随意契約で受諾しており、契約の公正性の問題とともに、市民意見を反映できる協議となっているかが問われています。駅前広場の在り方については、市民の総意によって進められるよう、協議の在り方を見直し、市民参画の仕組みを具体化するべきです。
市民生活の厳しさが増すもとで、市営住宅の果たす役割が高まっており、子育て世帯、障害者世帯、DV被害者等に対応する戸数を増やすとともに、様々な福祉との連携による伴走支援体制を強化すべきです。
教育費では、全市一斉に行ってきた5ラウンドシステムの方針を次年度から見直しますが、突然の転換で現場に混乱を生じさせかねません。「教師の教育の自由」の規定のもと、教育行政はその確立に向けた条件整備が役割のはずであり、反省のもとに現場へのフォローを徹底すべきです。
学力調査については、学校組織内や児童生徒間での序列化や過度な競争が生じることが無いよう、厳正に取り扱わなくてはなりません。
学校給食の公会計化に伴い、今後食材の調達も市の役割となります。市内産米の給食活用の目標値を設定し、調達の仕組みを確立すべきです。
当然のことながら、計上された予算の大部分は市民生活全般を支える有用なものであり、賛成できますが、さきに述べた諸点における政治的比重から反対を表明して、日本共産党三好剛史の討論といたします。