10月29・30日に福山市母親大会実行委員会と福山市との要望懇談が行われました。みよし剛史、塩沢みつえ両市議、河村ひろ子県議が同席しました。
母親大会実行委員会は、4月に6分野・41項目の要望事項を福山市へ提出し、市からの文書回答にもとづいて8月21日には「教育」と「食」の分野での意見交流が行われていました。
今回は「こども」「環境」「平和」「くらし」の分野での要望についての意見交換の機会でしたが、多方面に及ぶため2日間に分けて行われました。
29日は公共交通や保育施設の複合化、児童館の設置などについて意見が出され、所管の部署が対応しました。

暮らしに不可欠 公共交通充実を
免許を返納した高齢の方にとって公共交通は生活に不可欠なものですが、「足が悪くてバス停まで行くのが大変」、「バスがなく病院にタクシーで行かざるを得ない。」との声が上がっており、タクシー利用の補助やコミュニティバスの運行拡大を要望しました。
対して市は、タクシー補助は「検討していない。」、「既存のバス・鉄道の活用をお願いする。」と答え、バス路線が無い地域では、「住民の要望に応じて乗り合いタクシーの導入を検討する。」と応じました。
すでに公共交通の利用が困難な状況が生じており、積極的な充実策が求められます。
居場所の課題切実 児童館の設置こそ
子育て中の参加者からは、「この夏も外で遊べる環境ではなかった。3か月間子どもを家に閉じ込めて生活せざるを得なかった。」と、悲痛な声が上がり、「親も子も地域とつながりを持てるような場所を」と、児童館の設置の要望が出されました。
市は、児童館の設置は「現時点で考えていない。」としつつも、「待ったなしの切実な声。」「各課で連携をとって取り組んでいきたい。」と答えざるを得ませんでした。
改めて児童館の重要性が浮き彫りになっています。
保育所との複合化 誰のための施設?
湯田保育所と幼稚園、交流館、老人福祉センターの4施設を集約・複合化する計画について、役割の異なる施設の集約化であることから、特に子どもたちがのびのびと過ごせる保育環境への影響を懸念する声があがり、市の考えが問われました。
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市は「地域の意見を聞き、保育環境にも配慮した施設にしていく予定。」と回答しつつも、「すべての住民の意見を聞くことはできないが、住民の代表と話し合いを行った。」、「限定的ではあるがワークショップも行った。」と説明し、多岐にわたる施設利用者の意見が十分に聴取されたのか不透明です。
「一部の人の意見になっていないか。」、「保育士の声を聴いてほしい。」と、参加者からは意見が出されました。
国は施設の複合化を強力に進めていますが、利用者目線の整備こそ必要です。

介護職員が不足増 市の支援具体化を
介護職員の確保が困難な状況が続いており、介護現場の負担増とともに離職するケースや、事業所ができても人手が確保できず開業できないなど、状況は深刻です。
市は人材確保策として就職面談会や小学校等でイメージアップに取り組んでいると答えますが、「本当に人材確保の実績につながっているのか。」と疑問の声が上がりました。
市は実績について「把握できていない」と答える一方、奨学金制度など具体的な支援は「検討していない」と言います。状況を打開する具体的な施策が求められます。
PFAS検出問題 住民不安の払拭を
製造・使用が禁止されているPFASが加茂川上流域で高濃度検出された問題について、同地域で米を生産している参加者からは「PFASがあると知りながら米を作っている。」と不安の声が訴えられました。
一方で、「井戸水の検査では50ng/L以下だと判ったが具体的な数値は知らされていない。」、「血液検査では血中濃度ではなく肝機能・腎機能の検査だけだった。」など、住民不安への対応は十分でなく、「いつになったら原因が究明されるのか。」と怒りの声が上がりました。
市は、井戸水は「健康に悪影響が生じないと考えられる水準」とし、原因究明については「国の手引きに則り対応する」と答えるのみです。
住民が抱えている不安の払拭には、まずは原因の特定が必要であり、市がどう取り組むかがが問われています。
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48事業所が休廃止 深刻な介護現場
24年度の介護保険事業所の休・廃止件数は48件にも上っています。
特に訪問介護事業所については24年度、新規2件に対し休廃止は6件で、23年度との合計では新規5件に対し休廃止は13件にもなり、減少傾向が顕著です。

決算委員会でのみよし市議による質疑では、全体の休廃止件数のうち、人手不足によるものが18件、経営困難によるもの5件だったことが明らかになりました。
また、24年度当初の特別養護老人ホームの待機者は1043人で、施設入所の要望に応えられない状況も明らかですが、居宅での介護を支える訪問介護事業所も何らかの理由で事業継続ができない状況です。
みよし市議は介護従事者の処遇改善や事業所への継続支援など、市の支援を早急に講じるよう求めました。
ふるさと納税収入 自治体が奪い合い
ふるさと納税制度による各自治体への寄付額は年々全国的に増加する傾向にあり、23年度で1兆円を超える規模にまでなっています。
この寄付金の奪い合いが自治体間で行われており、泉佐野市などでは過度な返礼品を提供するなど、問題視されるケースも生じています。
福山市においても寄付額が増える傾向にありますが、福山市民が他の自治体にふるさと納税の寄付を行った場合には、寄付額と同額の住民税が控除されるため、市へ入るはずの個人市民税の税収は減少してしまいます。
減収分については国が補填しますが、減収分の4分の3しか手当てされないため、制度が続く限り必ず税収への影響が生じる仕組みです。

収入上回る減収 実質赤字は1.7億
24年度の福山市の実績では、2億円の収入があったものの、他自治体へのふるさと納税による減収分は2億7千万円で、さらに返礼品の経費に1億円がかかっているため、実質で1億7千万円もの赤字となっています。また、こうした赤字の状況は4年連続です。
自治体の税の仕組みを壊しかねないふるさと納税制度は廃止するべきです。

財政は大幅黒字 市民には債権回収
2024年度の決算委員会が10月14日から24日にかけて行われました。
一般会計の歳入では、個人市民税は定額減税による影響を除けば約3億円の増収となり、収支は約47億円の大幅な黒字です。
税収は増えているものの、依然として市民生活や地域経済は厳しい状況が続いていますが、市は税の滞納整理のため、滞納者の財産調査を年間15万件以上行い、差し押さえが約3000件行われていました。
機械的な滞納処分ではなく、暮らしの状況を把握し、丁寧な納税相談の取組こそ強化すべきです。

一般会計への繰入が前年度より約43億円増加しましたが、それらの財源は、借金の発行の抑制や、大型開発、こども未来館の莫大な整備費用に備えるための基金に積み立てられました。また、年間の黒字分を積み立てる財政調整基金は依然として200億円を超えています。


財政調整基金の原資は元々市民が収めた税金であり、市民の暮らしを支える施策に使うべきものです。
しかし、将来の大型の施設整備や開発事業のために使われようとしていることには市民理解が得られません。
みよし剛史市議は、人口減や高齢化への備えや、当面の暮らしの支援のために有効活用するよう求めました。
市教委は学校教育環境の在り方についての新たな基本方針策定に向け、学校教育環境検討委員会で検討を進めていましたが、9月の検討委員会で「福山市がめざす学びを実現する学校教育環境の在り方について」の答申案が示されました。
答申案では、今後の学校再編の在り方について、これまでの学校再編を「成果」と評価した上で、学校教育には一定の集団規模が必要であるとし、複式学級や1学級19人以下となった中学校の存在は認めず、適正規模の義務教育学校の整備を中学校区単位で強力に進める方針を定めています。
市教委は現行の中学校区ごとに義務教育学校を整備した場合の学校規模についてシミュレーションを行い、適正規模の校区を示していますが、同一の校区で再編を繰り返さないよう、適正規模に満たない校区では他校区と広域再編の検討を行い、適正規模を超過する場合は校区を分割した上で整備を検討するとしており、学校再編のみならず校区も再編する方針で、あらゆる校区が対象となり得ます。

福山市がめざす学びを実現する学校教育環境の在り方について(答申)概要版.pdfをダウンロード
1600名の陳情 学校は地域の「核」
学校再編の検討は市民に動揺を生じさせており、7月に熊野町の将来を考える会から「熊野小学校の存続を求める陳情書」が議長・教育長あてに1600名以上の署名とともに提出されました。陳情では、学校再編の検討で熊野小学校が統廃合の対象校となれば、地域住民の活力やつながりが消失しかねないとの懸念の思いが述べられています。

定例会の一般質問でみよし市議は、学校再編が地域の在り方にまで及ぶ方針であることを指摘し、陳情に対する教育長の認識を質しました。
教育長は、「陳情は、少人数教育や地域とのつながりが失われるため学校を残してほしいという思いであると受け止めてい」るとしつつ、「学校再編は避けては通れ」ないと、あくまで再編を続ける考えです。
一施設の整備に多額の税を集中
市は9月定例会での補正予算において、旧市民体育館の跡地に計画している(仮称)子ども未来館の整備にかかる、整備費約80億円、10年間の運営費25億円の計105億円の財源を確保する債務負担行為、資材高騰に備えた14億円の基金積み立てを盛り込みました。
財源については国の補助金や交付税で賄われる市債も見込まれますが、少なくとも52億円程度は市の財源で賄うことになります。

整備内容には、(仮称)子ども未来館と道路を挟んで立地しているエフピコアリーナとの一体的な利用を目的として、敷地同士をつなぐ整備費9億円ものブリッジも含まれます。

みよし剛史市議は24日に行われた予算特別委員会において、夏場のこどもの居場所整備など、子育て環境改善を求める声が高まっており、一施設の整備に多額の税を投じるのではなく、まずは市民の身近な暮らしを改善する税の使い方に改めるべきだと指摘しました。
「クラゲ館」の移設費用は5億円⁉
また、市は大阪・関西万博で展示された「いのちの遊び場クラゲ館」の膜屋根などを移設させる万博協会の事業に応募しており、移設先は(仮称)子ども未来館に隣接する五本松公園内とし、決定すれば約5億円の費用が見込まれると説明しています。

万博のパビリオン移設は、子ども未来館の検討委員会で決められましたが、「クラゲ館」をプロデュースした人物は検討委員会のメンバーであり、検討経過や判断が適切であったのか不透明です。

